枝野氏の最終日の演説に見る「リーダーシップ」10のキーワードとは

リーダーシップのあらゆるキーワードが網羅された名演説

衆院選が終わった。
与党の議席が3分の2を超えるという結果となったが、それでも立憲民主党の登場は、歴史に残るであろう大きな出来事となった。
党首の枝野氏の言動は有権者から幅広い支持を得、メディアの注目も高まり続けている。

枝野氏の演説をつぶさに見て行くと、古くから言われ続ける「動機付け」「方向付け」などはもちろん、今の時代だからこそ必要とされる「スピード感」や「ボトムアップ」「アジャイル」といった「リーダーに必要な要件」が散見されるのにお気付きだろうか。一般企業で働く管理職やチームリーダーの皆さんにも参考になる考え方、キーワードが多数出て来ていたので、ぜひ一緒に見ていきたいと思う。
*演説の内容は、いずれも最終日の新宿南口駅での枝野氏の言葉である。

 

リーダーの要件1)納得できるビジョンの提示

「国民の暮らし、草の根の声から離れて政治が上の方に行ってしまって上から国民の皆さんを、国民の暮らしを見下ろしている。だから暮らしの足元が見えない。
こうした政治の流れを変えていく、こうした政治の流れをおかしいと思っている人たちの声を受け止めていく、そんな存在に立憲民主党はなりたいと思っています。」

シンプルで力強い言葉で、その目指す方向性、ビジョンを提示する。「これをやります」と政策を並べるのではなく、「こうありたい」という言葉で表現されているところも、人々の心に届きやすい理由ではないだろうか。企業で働く管理職も、このように力強い言葉でビジョンを語りたいものである。

 

リーダーの要件2)シンプルでわかりやすい言葉

「人生誰にでも、自分の力だけではどうにもならないことがある。そのときのためにあるのが政治なんじゃないでしょうか。」
「権力を持っていたら何をやってもいいというのは18世紀の人類の歴史です。」
「この立憲主義というのは右も左も関係ない。」

誰にでもわかりやすい言葉遣いは、人々の心にガツンと届く。
ツイッターでも下記のようなコメントを多く見かけた。

 

リーダーの要件3)スピード感

「皆さんに背中を押していただいて記者会見をしてからまだ20日も経っていません。」

一人きりで立ち上げた政党が、およそ1週間で78人の候補者を擁立。制作物もウェブサイトやSNSのクオリティも他党を圧倒的に凌駕していた。ツイッターのフォロワー数が一気に他党を抜き去ったこともメディアを賑わせた。

 

リーダーの要件4)トップダウンからボトムアップへ

「リーダーシップ」を発揮するというと「自らが主役となって、メンバーをぐいぐい引っ張って行く人」というのを想像する人が多いだろう。
しかし、枝野氏は下記のように語った。

皆さん一人一人が選挙の主役です。民主主義の主役です。明日の主役です。
だから皆さんの思いが少しでも通じる、そんな選挙結果にするために、私たちも一緒に戦わせてください。みなさん一緒に戦いませんか
一緒に戦いましょう!

主役は党首ではなく国民。
社長ではなく、社員一人ひとり。
管理職ではなく現場で働くスタッフ。

組織の方向づけを行うのはリーダーだが、変化を実行して行くのは私たち一人ひとりだ。
社会においても、組織においても、トップダウンの時代は終わり、ボトムアップの時代が来ているのではないだろうか。

 

リーダーの要件5)変化を恐れず、受け入れて行く

上からではない暮らしの足元からの、草の根からの、右でも左でもない新しい軸を前に進めていく、その歩みを皆さんと一緒に進めていきたい。
そのことを力強くここでみなさんにお約束をさせていただきます。

東日本大震災をきっかけに様々な市民活動が以前にも増して活発化し、人々の価値観も大きく変化した。そしてその変化は、ITの飛躍的進化を筆頭に、加速度を増している。そのような変化の中では、「これまでの考え方」「過去の成功体験」と言ったものが通用しない場面が増える。ここで必要となるのが「変化を恐れず、受け入れ、新しい変化を作り出して行く」力だ。組織が大きくなればなるほど、この力は弱まる傾向がある。与党第一党しかり、大企業しかりだ。
「今」何が起きているか。変化を見逃してはいけない。リーダーたるもの、変化することを恐れてはいけない。

 

リーダーの要件6)共感力

今回の選挙で、立憲民主党を立ち上げて、様々な皆さんの声を聞く中で、改めて感じました。
選挙の主役は、民主主義の主役は政党や候補者ではない。
皆さん一人一人が選挙の主役です。民主主義の主役です。明日の主役です。

まわりの人々の言葉に真摯に耳を傾けていることがはっきりと見て取れる言葉だ。そして耳を傾けるだけでなく、その言葉に「共感」し、自らの言葉として発信する。あなたは部下の言葉にしっかりと耳を傾けているだろうか?しっかりと受け止め、共感しているだろうか?

 

リーダーの要件7)当事者意識の醸成

私にはあなたの力が必要です。(90度回転して)あなたの力が必要です。(さらに90度回転して)あなたの力が必要です。(さらに90度回転して)あなたの力が必要です。

大きな改革は、トップダウンだけでは実現できない。会社で言えば、社員一人ひとりの自ら「変わろう」「変えよう」とする努力、想いが欠かせない。枝野氏の「一緒に戦いましょう」の言葉は、企業で言えば社長が「一緒にこの会社を変えていきましょう」ということに等しい。改革を自分ごととして捉える人が増えれば増えるほど、改革は容易に進みやすくなる。「今の政治(会社)がひどい」と思うなら、政治(会社)を批判するだけではなく、一人ひとりが当事者意識を持って、改革のために行動を起こさなければならない。

 

リーダーの要件8)ダイバーシティ(多様性)を受け止め、生かす

「都市と地方、豊かな人とそうでない人、高齢者と若者、正社員と非正規、社会が多様化していていろんな暮らしがある。いろんな意見がある、価値観がある。そんな中でこの国をまとめて、みんなで前に進んでいく。」

社会が成熟し、人々の価値観は日々、多様化している。もはやこれまでのように「こうあるべきだ」というトップの価値観で人々を動かすことはできない。人々の多様性をどう受け止め、多様な能力をどう生かして行くかが、新しい時代のリーダーに欠かせない能力のひとつなのである。

 

リーダーの要件9)オーセンティック

「私自身も数は力という永田町の俗説に24年さらされて勘違いしていたかもしれない。反省しています。」

オーセンティックとは「本物の、真正な」と言った意味合いで、自分自身の価値観や、誠実さや倫理観とと言ったことを大切にするのが「オーセンティック・リーダー」だ。枝野氏の上記の言葉に、筆者は胸を打たれた。これまでに、これほど自分自身と真摯に向き合い、それを言葉にした政治家がいただろうか。

 

リーダーの要件10)アジャイルに対応する

アジャイルは「俊敏」「すばやさ」と言った意味で、主にIT業界での開発手法として使われる言葉だが、組織においても、変化の速い状況下で、「迅速に意思決定し」「素早く実行する」「変化が起こることを前提に臨機応変に軌道修正する」といった意味合いがある。枝野氏は、テレビのインタビューの中で「まわりの意見を聞きながら演説の内容や形を変えていった」といった趣旨のことを述べている。この「アジャイル」な対応は、既存政党にはなかなか見られないものだ。そして、変化の速い現代において、このフレキシブルさは、必ずや強い武器になることだろう。

 

以上、新しい時代のリーダーに必要な要件について、枝野氏の演説を参考に、見て来た。企業で働く管理職の皆さん、現場リーダーの皆さんの参考になれば幸いである。