「与党は大勝」のメディア報道を検証する:一騎打ちの選挙区では立憲が全勝

自民党の得票は3分の1しかない

まず、このグラフを見て欲しい。
過去8回の衆議院選挙比例区における党派別の得票割合の推移だ。便宜上、自民党以外を野党としてまとめているが、どちらが自民党だと思われるだろうか?「自民党1強」というイメージが強い読者の中には、もしかしたら青線の方が自民党だと思われた方もいるのではないだろうか?

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%94%E4%BE%8B%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E5%88%B6

正解は、青線が自民党以外の合計である。赤線が自民党だ。比例区で自民党に入れた有権者は、実は一貫して意外と少ないことがわかる。

 

無党派層の一番人気は立憲民主党

さらに、無党派層に着目してみると、共同通信の出口調査によれば、無党派層の比例代表での投票先で、最も支持を集めたのは立憲民主党の31%で、自民党をはるかに凌駕している。

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171023/k00/00e/010/383000c

 

自公との一騎打ちでは立憲民主党が全勝

次に、小選挙区に目を向けてみよう。
竹村英明氏(脱原発政治連盟緑茶会代表)は、「小選挙区では与党が苦戦」として下記のようなポイントを挙げている。

・自公との一騎打ちでは立憲民主党が全勝
・立憲民主党、希望の党、自民党という三分裂となったところでも、自民党・公明党の候補を振り切って勝った選挙区もある。
・少なくとも、希望の党を抑えて2番手となり、惜敗率も高く比例当選した候補者も少なくない。
(全文は衆議院総選挙結果を読み解くをご覧ください)

これらの数字を見てもわかるように、もしも野党が一本化できていたら野党は圧勝だったわけだ。

 

自民党は立憲民主からもらった一票で議席確保

「立憲民主党がもっと小選挙区に候補者を立て、もっと比例区に候補者を並べていたら、与党側の議席数は確実にもっと少なくなっていただろう」という竹村氏のコメントもさらなる希望を与えてくれる。

今回の立憲民主党の勝ち方は尋常ではない。東海ブロックでは比例得票数に割り当てられた議席数に候補者数が届かず1議席をみすみす他党に渡さざるを得なかった。この1議席をもらったのが自民党で、これによって自民党はかろうじて改選前と同数になった。

 

共産党は「立憲民主党の躍進は大きな喜び」

今後、野党共闘はどのように進むのだろうか。
共産党は議席数を20議席から11議席に減らしたが、下記のようなメッセージを出しており、今後の野党共闘の継続への希望も持てる。

今回の総選挙で日本共産党は、市民と野党の共闘を成功させることを、大方針にすえて奮闘してきました。日本共産党、立憲民主党、社民党の3野党が、市民連合と7項目の政策合意を結び、協力・連携して選挙をたたかいました。立憲民主党が躍進し、市民と野党の共闘勢力が全体として大きく議席を増やしたことは、私たちにとっても大きな喜びです。http://www.jcp.or.jp/web_policy/2017/10/post-766.html

政界再編が落ち着くには少し時間がかかるかもしれないが、野党第一党となった立憲民主党には、その初志を貫徹して欲しいと思う。また市民の側も、政党に過剰な期待を寄せるのではなく、自ら参加して動くという、今回生まれた新しい選挙活動の流れを止めることなく、続けていかなければならない。

 

圧倒的な迫力で難民問題を体感させる

一方で、気になる数字もある。
「18、19歳」の比例代表での投票先は、自民が46.1%でトップだという。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017102200991&g=pol

今後を担う世代にこのような傾向が出ていることは、自民党のメディア戦略の成功でもあるのだろうが、憂うべき状況である。

 

ポピュリズムの台頭にやっと追いついた日本

東京大学社会科学研究所の宇野重規教授(政治思想史・政治哲学)は、今回の選挙結果について下記のように述べている。

現在、世界の国々の多くでポピュリズムが猛威を振るっている。経済のグローバル化によって痛めつけられた人々の怒りは、あるときは排外主義的な右派ポピュリズムへ、またあるときは格差是正のための再配分を求める左派ポピュリズムへと向かっている。
http://www.asahi.com/articles/ASKBR3HSRKBRUCVL001.html

今回の立憲民主党の躍進は、単なるムーブメントではなく、グローバル社会全体での大きな流れに乗った必然であり、日本の市民社会にも大きな変化が訪れたエポックメイキングな出来事として歴史に刻まれることだろう。メディアも、自公で3分の2といった数字だけではなく、社会に起きているこの大きな変化に着目して報道して欲しいものだ。そして、この変化を一過性のもので終わらせるかどうかは私たち市民一人ひとりにかかっている。国政選挙だけでなく、地方選挙も含めて、市民による新しい政治を作っていこう。(枝元一)